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著作 (金融政策と為替)

2019年3月4日発売。

eリサーチ&インベストメント著作。(画像リンク)

 先進国における中央銀行の金融政策と外為市場の相関性を解説した基本書。

3月FOMC利上げ見送りの証左、米国の「製造業リスク」について。

今年4本目です。数を切ると分かりやすいですね。過去の話とつなげて記載するのが当ブログのポリシーでもあるので。(ニューノーマルの理)

 

そういう意味において、1本目の記事(1月5日記事)では、「今年の利上げは2回以内がテッパン、実質上は1度」「2度引き上げると今度は利下げ」という事や「特に製造業の指数が連続的な利上げを阻止する 」という事に触れさせて頂いた。

 

前者については「多くの人が言っているように」とさせて頂いたが、ここでいう多くの人、というのは、自分が(たまたま)見掛けた海外サイトの外国人の話ですよ。 国内ではこの時点(1月5日)において、「利上げ2度以内」と強弁していた人を見る事はなかった。 数日たってから市場が急落した後、「2度以内」は後追いするかのように急増していった印象。(どうでもいいかも知れないが)

 

後者、「製造業の指数悪化」について。 これについてはたまに聞かれるのだけど、昨年秋以降くらいから、米国における拡張的政策(緩和政策)と製造業の指数に一定程度の因果関係が存在する事が分かったからであって、製造業統計が全般的に悪化するのは、ある程度予想がついていた、というか少なくとも個人的にはそう思っていたわけです。

 

製造業の場合は稀によく聞く話として、GDPに占めるシェアが少ない(製造業は約12%)ので米国景気の行方にほぼ関係ない、という見当違いの意見を目にする事がある。 それは数字上の話であって、たとえば(一般的に注目される)米国の雇用の視点から見た場合でも、年末年始に増加傾向にある「臨時雇用」(一時的ビジネスサービス、派遣業)の中には製造業・工場の契約社員が存在し、「運送業」に分類される雇用者にしても製造業が起発点となっている。

 

雇用情勢のカテゴライズはあくまで目先の関わっている業務であって、製造業の影響力というものは計り知れない、という事。 現況を見ればそれは明らか。エネルギー産業の減速にしても、設備投資の減少は資材関連企業の減速につながる事になる。まぁエネルギー産業の減速が3月FOMC利上げ見送りにつながる 、とも言ってきたわけだが、 、

 

顧客の方であれば、昨年秋頃より、当ブログが製造業関連の指数に注目してきたのはご存知かと思われるが、その製造業指数は「1本目の記事」以降、(データ調査・意識調査、隔たりなく)総崩れ状態となっている。 先日、2月29日に発表された2月シカゴPMIは47.6で、前月から8.0ポイントの低下。 同日発表された、2月ダラス連銀製造業活動指数も-31.8ptで前月の-34.6ptから引き続きの低調。 

 

1月以降、これら地区連銀が発表する製造業指数まで見ていけばキリがないわけだが、端的に言えば総崩れ。繰り返しになりますが。 

 

米商務省が26日発表した第4四半期の実質GDP改定値も、速報値の0.7%から1.0%に上昇しているが、上記諸々の視点からみれば、企業の在庫調整が進んでいない事が判明しており今後も「製造業リスク」「設備投資リスク」が継続する兆候が明確に出ている。

 


 

 

 

しつこいようだが、上記はFFレートとシカゴ連銀発表の全米活動指数(四半期ベース)。Eリサーチ&コンサルティング作成。

 

2月22日に同連銀が発表したところでは、1月の全米活動指数は「+0.28」と半年ぶりのプラス圏内に浮上したが、当統計は振れ幅大きく、そのため、3カ月平均もしくは四半期ベースで見るのがベター。 

 

「+0.50-0.70水準以上」が長期的に継続すれば景気回復突入、というのが当統計の1つの目安といえるのだが、四半期ベースで見れば、全くといっていいほどその兆候すら見られない事が確認できる。金融政策の面から見ても、昨年12月の利上げはほぼ間違いなく勇み足 だったように受け取れる。それは、2004年の利上げ局面と比較すれば明らか。(上図、黄色枠)

 

上記は22日発表後の四半期ベースの推移であり、FFレートと並べた場合、連続的利上げはやはり危険なように思える。直近の数字は、2015年Q4の「-0.30」であり、この数字は2012年Q3レベルに匹敵する。特に気になるのは、他、製造業指数と同様に、2014年末から下落基調が継続しているところ。

 

株価の本格反転の兆しが見えない、と今年に入って述べてきたが、さきほど発表された2月ISM製造業も前月からは改善したものの、5カ月連続での縮小となり、もはやこれ(製造業リスク)は偶然ではない。そしてこれらは米国の金融政策と密接に関係している。

 

「米国経済に絶大な影響を及ぼす製造業」は緩和政策に支えられ、緩和が途絶えると停滞し、利上げすると減速が顕著になりつつある。「3月利上げ見送り」は、米国経済が様々な悪材料に包まれている事の証左となる事だろ。100歩譲って仮に利上げがあるとしたら? 大変愚かな事だといえる。

 

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追記: 今月開かれる産油国の会合は、3月FOMCより重要なイベントになる。ロシアエネルギー相の「原油生産の安定」といった発言に飛びつくのは安易であるとともに、ロシアが協議するとはいっても、あくまでサウジ側からの発信が市場にとっては重要になる。サウジアラビアが国際金融市場をリードしているのは明白だ。

 

結果としてロシア側からの原油に関連する発言が市場反発のキッカケとなり得る可能性も否定できないが、現時点では不透明かつ抽象的なメッセージであり、サウジの原油生産量に対する硬化的姿勢は簡単には変わらないと推測する。